【追悼文奏上】


                       元巡洋艦艦矢矧乗組   池 田 武 邦


 私は元軍艦矢矧の測的長として最後の戦闘に参加致しました。

 矢矧は当時最新鋭の巡洋艦として、佐世保の海軍工廠で出来たばかりの軍艦でありまして、昭和18年の暮れに完成して間もなくマリアナ沖海戦、レイテ沖海戦そして最後の沖縄特攻作戦と、一年の間に当時の帝国海軍全艦隊が健全な状況から戦艦、航空母艦、巡洋艦、駆逐艦、全艦隊が全滅する三つの海戦全てに参加しました。

 最後の最後まで戦いまして、ついに弾尽き矢折れた大和矢矧他の駆逐艦はこの枕崎の沖約200キロの海底に今尚海深く眠っております。

 私はその時に生きながらえて今日がありますけれど、88歳年齢を迎えまして当時のことを昨日のように思い出します。多くの戦友が瞼の内に今もはっきりと私に呼びかけているように思います。

 ことあるごとに当時を思い起こして、この平和というものは一体なんだろう・・・戦争とは何か平和とは何か。いつもその思いに駆られて私が今こうして生きながらえている限りは、多くに戦友達が眠っていることを想い、日々おろそかに過ごしてはいけないとという戒めを常に思うのであります。 

 今こうして矢矧と大和と涼月、朝霜、霞、浜風他多くの英霊が眠っている海を眺めながら、私達日本人は平和を享受しております。その陰には我々の先輩同僚達の本当の血と涙がこの海に眠っているのだということを常々忘れてはならないと思います。
 そして平和の尊さをかみしめて、残された命を大切に過ごしていきたいと思います。終わりに英霊に静かにお眠りくださいと申し上げてご挨拶に代えさせて頂きます。

         
                         平成24年4月7日 
                
 
   ー平和祈念展望台奉賛会ー